西田幾多郎の姪 高橋ふみの生涯と思想
おふみさんに続け! 女性哲学者のフロンティア


著者 浅見 洋
体裁 A5判 220頁 並製
定価 2000円+税
ISBN978-4-908765-08-7


日本を代表する哲学者・西田幾多郎を伯父に持つ早世の女性哲学者、高橋ふみ。
女子に学問は不要と言われた時代に茨の道を切り拓き、後に続く後輩たちの指針・憧れとなった。
ふみは立ち現れるさまざまな困難な状況の中、いかに己の道を貫いていったのか。
儚くもたくましく生きた、稀有な女性哲学者の姿を追う。


……ものに怯せず、周囲に頓着せず、言動には時に不敵で、粗放はところもあったが、その底に非常に優しい人間らしさを、女らしい情の細やかさが隠れていた。
その高橋さんの内にも、何か平均人を超えた資質があった。ニーチェがaußerordentlich(並外れた)な精神でなければならぬ、と言った異常な天性があったように思う。
(哲学者・西谷啓治の回想)
 

先月ある学生に「人生は楽しい処(ところ)でも苦しい処でもない。淡々たる水の如きものだ。しかし、といって楽しみも苦しみもないというのではない。楽しみも苦しみもただ水の如き味わいがするだけなのである。これが三十を過ぎて得た私の人生観だ」といったらひどくがっかりして解せない顔をしていました。お分かりになりますか……

(女子経済専門学校『同窓会誌』)

……百姓の辛苦を思えとか今日一粒の飯を口に入れる事のできない人の事を思えということももっともである。しかし私は根本的な意味で斯かる事はしてはならないと思う。
三粒や五粒の飯が、もうおなかが一杯で食べられないという事は考えられないから、この人達は飯粒の三粒位は何とも考えていない事を示す。これは習慣にもよるが根本はものを人格として見ないという事に原因する。ものを単にものとしてしか見られない人は自身又ものでしかない。ものをも人格と見る人はその人自身人格であるのみならず、その人の世界凡てが人格である。何故ならばものと人格とは同じレベルに立つ事ができないから。この事は米粒だけに当てはまるのではない、ものに対する我々の態度を決定するものである。食べられぬ時は半ば残すも、なお一粒の飯を貴ぶ心の床しさを持つ必要はないだろうか。
一粒の飯粒は実にその人が人格の世界に住むか、ものの世界に住むかを決定するのである。
(『学園新聞』)



口絵      

序――高橋ふみ 女性哲学者のフロンティア             
1 おふみさんに続け!    
2 哲学研究者としてのキャリアを求めて    
3 スピノザ研究――運命として背負ったもの           
4 知識的に磨かれること

1章 生い立ち――育みしもの       
1 ふるさと ――すなどりの暮らしと子どもたち      
2 学問を愛する女性となる素地    

2章 生徒の頃――夢物語からの出発           
1 七塚小学校時代 ――めんちゃの夢          
2 女らしさと理屈っぽさ 
3 高等女学校の良妻賢母教育        
4 空白の二年間――奇抜な娘        

3章 東京女子大学時代――おふみさんの誕生           
1 創設の理念――自由と教養        
2 哲学的関心を育む        
3 女性の生き方――芥川龍之介の手紙より

4章 東北帝国大学時代――哲学研究者へ    
1 女性に開かれた門戸――女子入学の波紋 
2 最高学府での学び        
3 転換点――学ぶものから教えるものへ    

5章 自由学園教師時代――教育・研究に伴う寂しさ
1 自由学園の教育理念    
2 文化の香り――モダンガール    
3
 国語教師として――本を読む態度           
4 男と女――『婦人之友』座談会より        
5 粛々とした寂しさ        

6章 飛躍――大都市ベルリンでの留学生活
1 渡航の船の中で――異文化体験の始まり 
2 ベルリン大学とドイツ語翻訳のきっかけ 
3 日本人学校教師としてのジレンマ           
4 ベルリン・オリンピックと日本人の血    
5 日本文化の紹介を志す 
6 都市生活――忙殺される日々    

7章 学都フライブルク――思索と対話      
1 美しき南独の古都        
2 ギュンタルスタールの暮らし    
3 東西文化比較――親子、男女のことなど 
4 ハイデッガー・ゼミナール        
5 「飯を喰った経験」と二つの講演           

8章 帰国――志半ばにして           
1 戦争の足音と引き揚げ船           
2 帰国後――病に蝕まれて           
3 故郷での療養――愛智の精神衰えず        
4 終焉――水のごとき味わい        

9章 託されしもの           
1 高橋ふみ記念文庫と日本学への波紋        
2 ふみとは誰? 

付録1 女子高等教育の問題シンポジウム 
付録2 ラジオ講演「女子教育における知識の問題について」
付録3 書簡1 昭和十二年二月十四日 西田幾多郎宛(封筒なし) 
書簡2 昭和十三年初頭  西田幾多郎宛(封筒なし、途中まで)           
書簡
3 昭和十三年六月二十六日付け 高橋宇良宛    
書簡4 昭和十三年六月二十七日 高橋泰雄宛     

略年譜      

著者
浅見 洋
石川県西田幾多郎記念哲学館館長、石川県立看護大学教授。
昭和26年石川県能登町生まれ。金沢大学大学院文学研究科哲学専攻修了、博士(文学、筑波大学)。
主著:『西田幾多郎とキリスト教の対話』、『西田幾多郎――生命と宗教に深まりゆく思索』、『思想のレクイエム――加賀・能登が生んだ哲学者15人の軌跡』、『二人称の死――西田・大拙・西谷の思想をめぐって』



HOME